卒業式や入学式の親の服装に着物というのは目立ち過ぎでしょうか?
土地柄や校風にもよりますが、最近では卒業式や入学式に着物を着るお母さんは少なくなりましたし、主役は子どもなのに着物にするとまるで「自分が主役よ!」とでも主張をしているような気もするし・・・など悩むお母さんもいますよね。
今回は、母親の服装としてどんな着物ならいいのか、やめた方が良いのか、付け下げや小紋でもいいのか等、着物の是非についてお話しします。
卒業式や入学式、母親の服装で着物は目立ちすぎる?ダメなの?
入学式でも卒業式でも、「見た目で目立つから」という理由で着物を着ることを遠慮する必要はありません。
そもそもで着物の人が少ないので、目立つといえば目立ちます。とはいえ、選び方を間違わなければ、フォーマル度はアップしますし、きちんと着付けすれば控えめながらも上品さも華やかさもある素敵な装いになりますよ。
洋装の場合には、卒業式では黒や紺、グレーなどのダークカラーを、入学式では春らしいベージュやピンク、水色というパターンが多いです。着物の場合も同様に、卒業式では落ち着いた色合いを、入学式では春らしい淡い色合を選び、いずれの場合も派手な柄のものを避ける、髪型をきちんと整える、アクセサリーは控えめに、、など配慮すれば、悪目立ちするようなことはありません。
着物は着慣れていないと、移動が多かったり、式典などで座る時間が長いと疲れてしまうことがありますが、着慣れてくると楽なものです。正絹(しょうけん)であれば、洋装よりも暖かく感じますし、帯でお腹まわりをしっかり支えられているため、自然と姿勢もよくなります。
着物や小物を上手に選べば、卒業式にも入学式にもおすすめの服装なのですよ。ただ、着物を選ぶ前に、考えておきたいこともあります。
卒業式・入学式で親が着物を選ぶ前に考えておきたいこと
卒業式や入学式の主役は子どもです。
結婚式や成人式では主役は自分ですし、お呼ばれの結婚式でも招待にふさわしい服装で参列するため、周りにも協力してもらい自分中心のスケジュールを組むことができます。でも、卒業式や入学式だとそうもいきません。特に入学式は要注意です。
着物の着付けやヘアメイクはどうする?
まずは、なにより子どもの準備が大切です。卒業式であれば、子どもは自分で身支度をしてくれるので、多少のお手伝い程度で済むでしょうが、入学式では子どもの準備を手伝う必要があります。
子どもの準備をしつつ、自分の身支度を整える必要があります。着付けやヘアメイクに十分な時間をどう確保するか、まずは考える必要があります。着付けを美容室などで頼むのであれば、その時間家をあけることになりますし、自分で全てする場合にはその時間を確保する必要があります。両親や夫とも相談して、時間調整が大切になりますね。
入学式当日に配布物が多くないか?作業がないか?
入学式の場合には、当日に配布物が多い可能性もあります。教科書など重い荷物を持ち帰る必要があるケースや、持ち帰らなくてもその場で名前を記入するなどの作業が発生する場合もあります。
2月ころに行われる入学準備説明会で配られる「入学式当日の持ち物リスト」といった書類に、「油性サインペン」という記載があれば、名前記入の作業が発生すると考えられます。
当日教科書などを持ち帰る場合には、ランドセルに入ったとしても、1年生の子どもにはとても重いです。家に着く前に子どもが疲れてしまうと、その荷物を持つのは親になります。
ご両親(子どもの祖父母)や夫などの付き添いがあれば頼むこともできますが、一般的にはお母さんの作業になりがちです。普段は何でもない作業も、慣れない着物だととても大変に感じることもありますので、ご注意ください。
1学年上のママ友がいれば、事前にリサーチしておくのはおすすめです。
悪天候ならどうする?
卒業式や入学式シーズンは、まだまだ天気も不安定です。多少の雨であれば問題ありませんが、雪が降ることも。地方にもよりますが、春先の雪は厄介なことが多いですよね。着物の場合、普通の草履ですとつま先が汚れますので、雨カバーも必要です。雨カバーでも濡れる場合、雪が積もった場合にはどうするか、、、
どんな悪天候でも着物で行くのか、それとも服装を変えるか、、心のどこかに留めておくと安心ですね。
着物で学校まで歩ける?
着物に慣れている場合には、さほど問題にはならないのですが、もし着慣れていないのであれば、学校まで歩けるのか?これは結構重要な問題です。
新しい靴で靴ずれがあるように、慣れない草履で歩くと鼻緒ずれになることも。余裕があれば、事前に草履で歩いてみるのもおすすめです。入学式を終えて子どもが元気に歩く横で、お母さんが鼻緒ずれでスマートに歩けないなんて、ちょっと悲しいですものね。
卒業式や入学式、母親はどんな着物?
入学式や卒業式で母親が着物を着る場合には、訪問着や色無地、帯は袋帯で二重太鼓に結ぶのが一般的です。
着物には、「格」というものがあります。TPO応じた格の着物を選ぶことは、着物を着る上での最低限のマナーです。
卒業式や入学式では、準礼装や略礼装の着物を選びましょう。
正礼装(第一礼装) | 打ち掛け、黒留袖、本振袖、喪服など |
準礼装 | 色留袖、訪問着、付け下げ、振袖、色無地、江戸小紋の紋付など |
略礼装 | 江戸小紋、付け下げの紋なし、小紋など |
外出着 | 付け下げ小紋、小紋(友禅)、小紋、紬の訪問着、無地の紬、絞り、お召、更紗など |
街着・普段着・浴衣 | 紬、絣、ウール、木綿、浴衣など |
※ 紋の数や、柄、帯の合わせ方によって格が変わることもありますので、厳密なものではありません
卒業式や入学式での着物選びのポイント
- 卒業式では、紺やグレーなどの落ち着いたダークカラー、入学式には春らしい淡い色がおすすめ
- 大きく派手な柄は控える
- 帯は袋帯で二重太鼓に
名古屋帯の場合には、金糸か銀糸の織のあるものであれば可 - 入学式では帯地も淡い色で、金糸や銀糸の織りがある礼装用のものを
- 全体的にぼんやりしたり、地味すぎる場合には、帯締めなどの小物でアクセントをつける
- 品格を保つためにも、長襦袢や半襟は白
- イヤリングやピアスなどは控えめに、つけるのであれば大きめのパールを1粒程度に
着物の格の考え方
着物の場合には、TPOに合わせた格のあるものを選ぶことは最低限のマナーなのですが、AといえばBのように簡単にはいかないのがまた面倒でもあります。
同じ江戸小紋でも、柄によっても格は異なりますし、紋のあるなし、あればあったで紋の数でも格の関係は変わります。着物だけでなく、式典の内容や、主催者や主賓との関係によって自分の位置付けが異なりますので、相応しい着物が変わってくるとされます。
そのマナーや格付け自体も、厳密で唯一のルールがあるわけではありませんし、卒業式や入学式における保護者の服装であれば尚更ガチガチなものではありません。ですから、あまり格や着物のマナーといったものに縛られる必要はありませんが、ある程度は意識することがおすすめです。
訪問着と付け下げの違いについて詳しいことを知りたい場合は次の記事がオススメです。
→留袖と訪問着と付け下げの違いは?紋の数で格はどう変わる?
卒業式・入学式の着物で付け下げは?
付下げも、紋付きでれば準礼装、紋なしでも略礼装の格ですので、卒業式や入学式で着用しても問題ありません。
元々、付け下げは訪問着を訪問着の豪華さを抑え簡略化した着物ですし、現在は柄も多様化していることもあり、よほど着物に詳しい人でないと、仕立て上がり状態では訪問着と付け下げの見分けが難しいものも結構あるのが現状です。
卒業式・入学式の着物、小紋は絶対駄目なの?
小紋は、全体に模様が一定間隔で繰り返し描かれている着物です。
お出かけ着の扱いですので、式典にはふさわしくないとの見方が一般的です。
同じ小紋でも、江戸小紋は、柄や紋付であれば格が上ですし、紋なしでも略礼装の格のため、問題ありません。
※ 紋の中でも江戸小紋に近い細かい柄が着物全体にあるものや、飛び柄で上品な色合いの小紋に織の袋帯という組み合わせ等にすれば大丈夫という意見もあります。
下の着物は江戸小紋です。
下の小紋は、本来は小紋という位置づけですが、色無地で飛び柄なので、帯次第でセミフォーマル程度には使えると思います。
もちろん子供が主役なので目立ちすぎるのは問題ですが、ある程度控えめで上品な着物なら、小紋でも大丈夫なケースがあるでしょう。
卒業式と入学式で同じ着物はダメ?
卒業式と入学式で同じ着物でも問題ありません。
帯や小物などを変えると印象がかなり変わるのが、着物の良さでもあります。卒業式では落ち着いたトーンのものを、入学式では明るく淡いトーンの小物を選ぶといいですよ。
さいごに
着物警察など、着物のマナーにとても厳しい人が一定数いるのは事実ですが、実際にはそんな人ばかりではありません。せっかくの子どもの晴れ舞台です。派手すぎない、悪目立ちしない、清潔で品のある装いであれば、大丈夫です。胸を張って堂々を参列してくださいね。
何か言われるのは絶対にいや!という場合には、訪問着や色無地であれば間違いのない選択です。上質な着物は、購入するとそれなりの価格になります。費用を抑えたい場合にはレンタルがおすすめです。格の高い着物ほど、品質がいまいちだと貧相に見えたり、安っぽく見える可能性があることにはご注意くださいね。
◆他にも卒業式や入学式で迷うことがあったら、こちらの関連記事が参考になりますよ。
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