「契約書2部を取引先に送って 、1部返送してもらって下さい。」
会社の業務で上司からこのような指示をされた際、契約書だけでなく返信用封筒や送付状を添えることが大切です。
今回は、返信用封筒を添えて送る際の送付状の書き方や、よく使う敬語の使い方や使いわけについてまとめました。
返信用封筒の送付状書き方は?
書類等を取引先に送る時は、相手が開封した際に、次の事項が的確に分かるようになっていることが重要です。
・封筒に何が入っているのか(内容、枚数等)
・誰が何をすればいいのか(記入事項、捺印、添付書類、返送方法、返送期限等)
必要書類だけではなく、送付状(カバーレター、挨拶状、添え状とも呼びます)を添えるのもビジネスでは大切です。送付状は、書類送付のご挨拶であり、送付内容のチェックリストの役割を持っているからです。
この送付状には次の内容を書きます。会社のフォーマットがある場合には、そちらが優先です。
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- 冒頭:日付、宛先、差出人名
- 題名:書類送付のご案内(書類送付状)
- 本文:「拝啓」、時候の挨拶、本題、「敬具」
- 記書き:「記」、書類名(箇条書き、枚数なども明記)、「以上」
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書類送付状の文例
20〇〇年〇月〇日
〇〇株式会社
〇〇事業部
営業部長
〇〇 〇〇様
株式会社□□□
東京都中央区〇〇町1-1-1〇〇ビル〇階
TEL:03-0000-0000
e-mail:ooooo@ooo.co.jp
□□ □□(←氏名)
書類送付のご案内
拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、下記の通り契約書類を2部同封いたします。
お忙しいところ恐れ入りますが、内容をご確認の上、
記名捺印いただき、同封の返信用封筒にて
1部をご返送くださいますようお願い申し上げます。
敬具
記
[同封書類]
・契約書 2部
・返信用封筒(390円切手貼付) 1部
以上
上記文例は、コピー&ペーストができるようテキストになっています。文字の配置(右・左・中央)などは、ご調整ください。
ビジネス文書の場合は特に短文で簡潔な書き方を心がけましょう。相手に失礼のないよう敬語を使うことは大切ですが、過度に敬語をつけると鬱陶しく読み難くなることもあるので、文章全体のバランスを考えながら調整する必要もあります。
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「いただきますよう」 「くださいますよう」 違いと使い分けは?
上記の送付状文例はあくまでも文例であり、他の言葉に置き換えても問題ありません。
例えば
「ご返送くださいますようお願い申し上げます。」
→「ご返送いただきますようお願い申し上げます。」
この2つの違いは「くださる」と「いただく」で、尊敬語と謙譲語の違いがあります。
→「ご返送いただきますようお願い申し上げます。」
(1)「くださる」と「いただく」の違い
- くださる→「くれる」の尊敬語。相手方の意思による行為に対する感謝のニュアンスが込めれる
- いただく→「もらう」の謙譲語。自分が相手にお願いする場合にへりくだっていう言葉。
(2)返送の前の「お」の違い
- 「くださる」の前の「お」→相手に対する尊敬語の接頭語
- 「いただく」の前の「お」→相手に対する謙譲語の接頭語
尊敬語と謙譲語どちらを使うか?
敬語は「相手を敬う表現」であり、尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類がありますが、
- 尊敬語→相手の動作を高めて尊重するもの(相手の行動主体)
- 謙譲語→自分の動作を相手より下げるもの(自分の動作主体)
- 丁寧語→単に丁寧な表現をするだけのもの
どちらかというと、尊敬語である「くださる」の方が、謙譲語の「いただく」よりも相手の行動に対する感謝の気持ちが入っており、より丁寧な敬語という印象になります。
二重敬語だけど問題ないの?
「ご返送くださる」「ご返送いただく」の2つとも、接頭語として「ご」が付いています。これは二重敬語かという点では、問題ありません。
敬語の基本は、「1つの行為(動詞)に対して1つの敬語」です。今回の場合は、「ご」は名詞に接頭語、それとは別に「返送する」とう動作に対して「いただく」「くださる」という敬語がついています。
二重敬語となりおかしな表現であるのに、使いがちなものに次のような言い方があります。
「仰られる」「いらっしゃれる」
「仰られる」は、「言う」の尊敬語「仰る(おっしゃる)」と、「する」の尊敬助動詞(れる)とで、1つの行為に対して敬語が2つ重なるから二重敬語で誤りです。「仰る」だけで正しい尊敬語です。
「いらっしゃれる」は、「行く」の尊敬語(いらっしゃる)と、「する」の尊敬助動詞(れる)とで、上記と同様に1つの行為に対して敬語が重複しているため誤りです。「いらっしゃる」だけで正しい尊敬語です。
送付ください お送りください 違いと使い分けは?
「下記の通り契約書類を2部同封いたします。」
上記文例ではこのように表現しましたが、
「下記の通り契約書類を2部ご送付いたします。」
「下記の通り契約書類を2部お送りいたします。」
このように、「送付」「お送り」という言葉を使うこともできます。
ビジネス文書では訓読みよりも音読みの「送付」を使うケースが多いかと思いますが、送付という言葉は、言葉を分解すると「送り付ける」という意味になり、相手が望まないものを一方的に送るというイメージがあるため取引先や目上の人に対して使うのは避けた方が良い、という見解もあります。
一方で、「ご」という謙譲語の接頭語をつけることでニュアンスが変わり、失礼な言い方でなくなる、という見解もあります。また、謙譲語の接頭語をつけても、元々の意味が良くないイメージなのだから、つける意味がない、違和感がある、という人もいます。つまり、唯一の正解がないのです。日本語の敬語は非常に難しい上に、使い方や解釈も曖昧で幅があるため、より難しく感じさせますね。
国語辞典によると、「送付」の意味としては、「物を送り届ける」「送り渡す」という意味があります。
「送」は人や物を別の場所に運び送ることであり、「付」は人に届けること、与えることとなっています。
「送」だけなら運ぶのが人か物か分かりませんが、「付」がつくことによって「物」に限定された、というニュアンスのようです。
「送り付ける」という言葉が一方的、無理矢理送るようなイメージがあることから、同じ漢字を使う「送付」についても良くないイメージを持つ方もいるようですが、元々の意味を考えれば「ご送付」も問題ないと解釈できるでしょう。
ちなみに、両方の場合で共通しますが、
・~する
・~します
・~いたします
・ご(お)~いたします
下になればなるほど敬語の度合いが高まります。
つまり、
◆「送付」の場合
・送付する
・送付します
・送付いたします
・ご送付いたします
◆「送る」の場合
・送る
・送ります
・お送りします
・お送りいたします
となり、下に行くほど敬語の度合いが高まります。
(1)「送付」も「送る」と同義語
送付は送り付けるという一方的なイメージがあるけれど、元々は「物を送り届ける」という意味で「送る」と同義語です。また、一方的なニュアンスも「ご」という接頭語の謙譲語をつけることで打ち消されるため問題ない、と一般的には解釈されています。
(2)「ご(お)~いたす」は二重敬語ではない
「ご(お)」と「いたします」については、名刺の接頭語と敬語なので二重敬語にはあたりません。
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さいごに
送付状の書き方はある程度決まっています。送付した内容物が確認でき、返送してもらう内容が明確になっていれば大丈夫です。くれぐれも、切手を貼った返信用封筒を同封して下さいね。
また、敬語は非常に難しく、人によって「しっくりくる」言葉が違うと思います。相手方への敬意と配慮を忘れずに、過度にならない範囲、かつ正しい敬語の範囲であれば、他の言い方でいいのです。ご自身の感覚も大切になさってくださいね。
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