雛人形はかさばるので結婚する際に実家に置いてくる女性が多いのですが、娘が生まれると「実家で眠っているお雛様を娘に譲るという方法も良いのではないか」と考えますよね。でも、娘に譲ってしまっても良いのでしょうか。
今回は、
- 自分の雛人形を娘に譲るのは駄目なのか
- 譲る場合の問題点と解消方法
- 新しく買う場合、結婚後実家に置きっぱなしの雛人形の処分方法
これらの問題の考え方についてご紹介します。
雛人形の歴史
雛人形の起源には、紙で作った人形を川に流して災厄を祓う「守り雛」であった説と、平安時代に貴族の子女の「雛遊び」との説があります。
現代と比べ比較にならないほど乳幼児の死亡率が高かった時代には、親はこの成長を願い、赤ちゃんの枕元に形代という身代わりをおき、厄除けとしてきました。1年無事に過ごすと、形代が代わりに受けた災いを春の「ひな流し」ではらったそうです。これが、ひな祭りの起源でもあります。
一方で、平安貴族の子女の雅な「遊びごと」として飾られてきました。これが、雛祭りが「ひなあそび」とも呼ばれる起源です。
江戸時代に入ると、人形遊びが節句の行事と合わさって庶民へと広まります。その際に、災厄の身代りという儀式的な意味合いと、お嫁入り道具としての意識が強まったようです。
お嫁入り道具という考え方故に、雛人形は贅沢で大型な作りとなっていきます。しかし、徳川8代将軍吉宗の享保改革で倹約政策となると、大型の雛人形を禁止する政令が公布されたことで、ほんの数cmの小さな小さな雛人形が流行ったこともありました。
江戸時代後期以降、再び大型化し、江戸と京都でそれぞれの形で発展します。戦後、流通事情や住宅事情などにより段飾り(七段飾りなど)が主流になりましたが、現在は3段飾りなどの小さめサイズが人気です。
雛人形を娘に譲るのは駄目なの?
結論からいうと、唯一の正解はありません。
雛人形は子供の災厄を身代わりさせるという意味で、1人に1つずつ必要だという考え方が現代では主流です。ネットで検索してもそのような記事も多いため、「雛人形を娘に譲るのは駄目」と思い込んでいる人が多いようです。
しかし、歴史をたどれば、雛人形とは「災厄の身代わり」であり、「子ども遊び」であり、「嫁入り道具」なのです。
そのように見れば、
- 災厄の身代わりとして考えれば、娘には別の雛人形が必要
- 子どもあそび や 嫁入り道具と考えれば、娘や孫娘へと代々受け継ぎ譲るのはOK
という解釈ができます。地域差もあるでしょうが、正解はないのです。
「嫁入り道具」の考え方にもいくつかあります。
- 「一代限りでなく次の世代の幸せを願う」という考え方で代々1つの雛人形(A)を大事にする
- 代々受け継がれた雛人形(A)と、自分の雛人形(B)を飾る
- お嫁入りしても自分の雛人形(B)を飾り、その娘には娘用の雛人形(C)を用意して一緒に並べて飾る
どちらにしても「買っただけ」「家に保管してあるだけ」では意味がなく、「毎年飾って愛でて、大事にすること」に意味があります。飾るのが面倒になって出さないとか、粗雑な扱いをして傷んでしまうということになれば、災厄の身代わりにもならないのですから。
ベタですが、大切なのは雛人形への思いや家族の理解です。両家の考え方、夫婦の考え方、生活スタイルなどをゆっくり考えて、譲るか譲らないか決めればいいのです。
雛人形の専門店に行けば、「雛人形はお嬢様の災厄の身代わりですから1人1つずつ必要です」等と力説されます。もちろん、先方には「商売」も絡んでいるので、当然といえば当然です。お店の意見には振り回されないようにすることをおすすめします。
雛人形を譲るときの問題点や揉める原因は?
雛人形を娘に譲る場合に想定される事がいくつかあります。
- 自分の災厄を娘に譲ってしまう(と思われる可能性がある)
- お祝いなのにお古を渡すなんて失礼だ(と思われる可能性がある)
- 勿体ない精神が強い、ケチ(と思われる可能性がある)
- 自分の孫に買ってあげられなかった(と思われる可能性がある、特に義母)
多くの場合は、譲った娘本人よりも、両家の親とのトラブルや、親戚や友人知人との考え方の違いから発せられた言葉によって生じます。
ですから、雛人形を譲る場合には、その理由を自分自身が理解していること、両家の理解を得ていることが大事です。その外側の、親戚・友人知人には、何を言われたとしても、自分の考えがしっかりしていれば、焦ることも後悔することはないのですから。
そして、娘に対してもどんな雛人形であるのかを、きちんと伝えていくことが大切です。場合によっては、どんなに説明しても、娘が成長した時に「お母さんのお古なんだ(がっかり、、)」と思われる可能性があることは忘れずに。
雛人形を新しく買う場合の問題点や注意することは?
雛人形を新しく買う場合には、また別な問題点や悩ましいことがでてきます。
- 雛人形を買うお金が必要
- 誰が購入するかでひと悶着の可能性がある
- 自分の雛人形の処分に悩む
当たり前ですが、雛人形を買うお金が必要となります。そして、誰がお金を出すか、については各家庭の考え方がバラバラで、家によっては「自分が買いたい!」「相手に買ってもらいたい」ということで揉め事になるケースが多いです。
娘にとっての両祖父母(つまり自分の両親と、夫の両親)それぞれが、「買ってあげたい」となると、厄介なことも。一昔前は、「女の子の雛人形は妻側の祖父母が購入し、男の子の五月人形は夫側の祖父母が購入する」というような地域的ないわれもありましたが、今はこだわりないところが多いです。
これは各家庭や地域で全く考え方が異なるので、世間一般の考え方が云々というよりも、夫婦でしっかり話し合い、両家祖父母の思いをくみ取って円満な対処が必要です。
結婚したら雛人形は処分すべきなの?
新しい雛人形を買う場合、自分の雛人形を今後どうするかという悩みにも直面します。解決方法は次の3つ。
- 実家で飾ってもらう
- 娘の雛人形と並べて飾る
- 人形供養に出す
実家で飾る
思い入れのある雛人形を実家で飾り災厄を祓ってもらう方法もあります。
両親には手間を掛けることとなりますが、遊びに来た孫娘にもみせることもできますので、頼んでみてもいいかと思います。両親が年老いてきたり、住宅事情で飾ることが困難になったら、その際にまた考えてもいいことでしょう。
娘の雛人形と並べて飾る
余裕があるなら、自分の雛人形と娘の雛人形と並べて飾るという方法もありですよね。
2つの雛人形を飾ったり、しまうのは、場所的余裕の他に、時間的精神的余裕も必要になりますので、無理のない範囲で楽しむのがおすすめです。自分の雛人形は、すべてを飾るのではなく、お内裏様(男雛と女雛)だけ飾るなど、飾り方を考えてみるのもいいでしょう。
人形供養に出す
人形供養といっても、捨てる、処分する、形になるので抵抗があるかもしれませんが、飾ることもなく永遠しまっておくだけなのであれば、心を込めてお礼をし、供養することもおすすめです。
昔は、神社やお寺で供養していただけたようですが、最近では受けていただける寺社も減っています。受けていても、受付期間が決まっていてタイミングを逃すこともありますよね。
おすすめは、こちら。
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やってはいけない処分方法
雛人形には、両親や祖父母の思いが込められています。一般ごみに出す、ネットオークションやメルカリなどのフリマに出品する、押し入れに永遠放置は、避けましょう。
自分の家族、知人や友人に譲ることはNGではありませんが、「災厄の身代わり」という考え方もありますので、双方の理解があれば問題ないでしょう。
さいごに
雛人形を販売している人形店に行けば、当然沢山売るのが商売ですから「雛人形は1人1つずつ用意すべきもの」という見解をごく当たり前の常識として提案してきますが、雛人形の起源を振り返るとそれ以外の要因もありますし、「絶対に雛人形を用意しなければならない」というものではありません。ですが、夫婦だけでなく祖父母の考え方が違うと揉めるケースも多いので、それぞれの意向を確認して、皆が納得してお祝いしたいものです。
雛人形を譲るか買うか、という問題は私自身も娘の購入の際に悩みましたが、後になって振り返ると「娘のため」といいつつ、自己満足だったり周囲の見栄も多分に含まれていました。
とはいえ、最終的にどちらを選ぶにしても、「この雛人形が一番良いと思ってあなた(娘)に選んだのよ、だから大事にしていこうね」ということは伝えていきましょう。子供というのは小さい頃には雛人形を大事にするものですが、成長すると興味が失せて、毎年飾るのが面倒になってくるものです。でも、小さい時に大事に思っていたという記憶があれば、ずっと心に残るものですよ。