フランス料理でライスを出された時のマナーについてご存知ですか。
中でも多くの人が迷うのがライスの食べ方です。どのような食べ方が正しいマナーでしょうか。
- 右手のナイフでライスをフォークの背中に乗せて、そのまま口に入れるのか。
- 右手に持ち替えて、フォークの腹に乗せて食べるのか。
多くの人がこの2つで迷うのですよね。
今回は、西洋料理におけるライスの食べ方マナーについて、フォークの持ち替えに関する問題も含めてお話しします。
ライスのマナーでフォークの使い方は?
ライスを食べる際のマナーについては、そもそも日本のご飯が欧米料理に存在しないため、具体的なマナーは存在しません。(イタリア料理にリゾットがあるものの、これはメインの添えという形のものであり、主食ではありません。)
とはいえ、日本のフレンチレストランで食べる際にはパンかライスを選ぶことが多いですし、その際にどうすれば良いのか知っておかないといけませんよね。
実際にどうするかについてこれからお話ししますが、最初にマナーの基本を思い出してみましょう。
食事マナーの基本
食事マナーで最も大切なのは、相手への思いやりです。
ライスの食べ方で悩むのが、フォークの腹と背のどちらを使うのかという問題ですが、実は、ここで意見が真っ二つに割れます。フォークの背を使うのも、腹を使うのも、どちらも正しいのです。
でも、楽しい食事の場面でフォークの使い方で揉めると嫌な気分になりますし、せっかくの食事会が台無しですよね。だから、一番良いのは両方のマナーで食べられるようにしておき、その場の空気を読んで相手に合わせることですね。
もし、相手が自分と違うやり方を主張するのであれば、受け流して相手に合わせることが必要かもしれません。
ところで、意見が真っ二つに割れる「フォークの背と腹」の問題は、イギリス式とフランス式のマナーの違いと対立が根本にあります。次に、この2つの違いについてお話しします。
イギリス式とフランス式のマナーの違い
マナーといえばイギリス式とフランス式の2つが代表的です。(その他簡易的なアメリカ式もあります。)
いずれの方法も、ライスを食べるのはメインディッシュである肉料理や魚料理と同じタイミングなので、フォークを左手に(背側が上)、ナイフを右手に持っている状態ですが、具体的な動作は次のようになります。
【イギリス式】
右手に持ったままのナイフを使って、左手のフォークの背側にライスを乗せて食べます。
【フランス式・アメリカ式】
フォークの腹側が上になるよう半回転させて鉛筆持ちにして、右手に持ったままのナイフを使ってフォークの腹にライスを乗せて食べます。(左手でくるりと半回転させるのが難しければ、いったんお皿にフォークを置いてから持ち直しても大丈夫です。)
では次に、なぜフォークの背と腹、どちらを使うのも正しいのかについてお話ししていきます。
フォークの背側を使うライスのマナーの由来は?
イギリス式とフランス式、どちらも正しいマナーですが、日本におけるマナーとしては明治時代に洋食文化が入ってきた時にイギリス式がお手本として取り入れられました。これは、その当時皇室と英国王室との友好的な関係なども影響したのかもしれません。
イギリス式のナイフとフォークの使い方で特徴的なのが、
- フォークを右手に持ち替えない
- フォークを回転(背側と腹側)させない
この2つです。特に、左手から右手に、右手から左手に持ち替えるというのはフォークの刃が料理の上を行き来することになり、失礼だという考え方があるので避けるべきです。
そして、西洋のコース料理に存在しない、ライスを出された場合にどのように食べるかというと、ご飯に形状が近い、豆類の食べ方が参考にされました。
豆類は小さいためフォークですくうのは難しく、一度フォークの背の部分で少しだけ潰したものを、ナイフを使ってフォークの背側に乗せて口に入れるという方法だったのです。
これが元になり、ライスもフォークの背に乗せて食べるのが日本におけるライスのマナーとして定着したのです。(ちなみに、ライスの場合は粘着力があるので、豆類と違って一度潰すという手間は不要です。)
ただ、これはあくまでも、日本におけるライスのイギリス式マナーというだけで、本場イギリスでの正式なマナーではないのですよね。本場ではライスが出されることは殆どないし。
そして、もう1つ、イギリス式のライスの食べ方には欠点があります。実際にイギリス式のやり方でライスを食べると分かるのですが、ライスをフォークの背に乗せて食べるのは難しいのですよね。
フォークの背に乗せる場合、フォークが曲線でライスが落ちやすくなっているため、(米の粘着力はあるといっても)多少はライスをフォークに押し付けて食べる必要があります。
そうすると、フォークの隙間に米粒が残ることもあるし、それを防ぐためには口元でフォークをこそげるように食べる必要があったりして、美しい食べ方をするのが難しいのです。
なので、窮屈なこともあり、今では廃れてきています。
一方、フランス式のマナーでは、ライスをフォークの腹に乗せるのですが、この場合は食べた後のフォークや口元がきれいな状態を保つことが可能です。
フランス式のマナーは元々イギリス式のマナーとライバル関係にあって互いに反発しあっていました。そして、イギリス式で「ライスをフォークの背に乗せて食べる」というやり方は古臭いという発想もあり、「フォークを反回転させてフォークの腹に乗せて食べる方がきれいに食べられる」という意識が広まり、現在ではフランス式の方が主流ともいえます。
ライスの時にフォークの持ち替えはOKなの?
近年では、ライスを食べる時にフォークを左右持ち替えて右手で食べても良いという見解もあるのですが、本格的なコース料理におけるフォークの持ち替えはマナー違反と見做されるので避けるのが無難です。
それに、フォークを右手に持ち替えると、ナイフが使えなくなるのでフォーク一本でライスを食べることになりますよね。その場合、平たい皿に乗ったライスを最後まできれいに食べようとして、フォークがお皿に接触してしまい、「キーキー」とうるさい音が発生してしまう可能性があるのですよね。
ですから、フォークは左手に持ったまま、右手のナイフで上手に寄せて食べるというのが良いのです。
ちなみに、持ち替えがなぜマナー違反かというと、
- フォークの刃が料理の上を跨ぐのは料理に対して失礼である。
- 何度も料理の上を跨ぐのを避けるために、最初にメインディッシュ(魚や肉)を全て切ると、子供の食べ方と見做されてしまう。
- カラトリーは本来、セッティングされている側の手で(右側に置かれているものは右手で、左側のは左手で)使うべきもの。
このような理由があるからです。
まとめ
西洋のコース料理における代表的なマナーとしてイギリス式とフランス式がありますが、ライスは西洋には存在しない食べ物だったので、正しいマナーは存在せず、ライスに似た豆類の食べ方を元に考えられたものです。
昔はフォークの背中に乗せて食べるマナーが主流でしたが、今はフォークの腹に乗せて食べる方法が主流となっています。
ただ、両方とも一長一短あるし、どちらが良いのかは、マナー本やマナー講師によっても見解が分かれています。
そして、実際に欧米の人がライスを食べる場合、ここまで細かく形にこだわることはなく、食べやすいように食べているという話も聞きます。
ですから、ライスの食べ方で迷った場合には、マナーの形にこだわらず基本に立ち戻って考えてください。
【食事マナーの基本】
- 相手に不愉快な思いをさせない食べ方にすること
- 食べる時に音を立てないこと(お皿とフォークが接触しないように)
- フォークが料理の上を跨がないようにすること(フォークの持ち替えは避けること)
このように考えると、左手に持ったフォークの腹に、右手に持ったナイフを使ってライスを乗せて口に入れる、という方法が、さりげない動作だし、食べやすいのではないかと思うのですよね。実際にレストランに行く前に、どの方法が食べやすいか一度試してみるといいですよ。