洋食でライスが平皿で提供された場合の、フォークでの正しい食べ方は解釈が分かれますね。
テーブルマナーは、相手への敬意であり、配慮です。相手の作法に対して、声を荒げて批判するようなものではないはずですが、白黒はっきりしないと気が済まない、マナーに厳しい日本人も増殖しているようです。不要な批判を浴びないように、押さえるところは押さえておきたいものですね。
フランス料理店でライスを食べる時のフォークの使い方
そもそもで、本格的なフランス料理では、白米が平皿で提供される「ご飯」はありませんので、ご安心ください。サラダやお料理の付け合わせでライスが出ることがあっても、ライス単品での提供ではありません。
ただ、日本国内の場合には、日本人が多いこともあり、パンの代わりにご飯(ライス)が提供されることもありますね。これは、日本人の主食が米であるためであり、言い方を変えればお皿にライスが盛られて出るのは日本独自のスタイルなのです。
フランス料理店では、フランス式のテーブルマナーに則ると間違いはありません。
フォークは左手で腹を上に持ち変える、あるいは右手に持ち替えて、フォークの腹にライスを乗せていただきます。
日本のレストランや他の西洋料理でライスを食べる時のフォークの使い方
日本のレストランで食事をする場合には、イギリス式と呼ばれるようにフォークの背に乗せて食べても、フランス式と呼ばれるようにフォークの腹に乗せて食べても、間違いではありません。
そもそもで、西洋では歴史上に白米(ご飯)が単品で平皿で提供されるようなことはなく、また今でも正式な晩餐ではパンの代わりに白米が平皿で「ライス」として単独で提供されることもないのに、「◯◯はマナー違反だ!」など、断言してしまうマナー講師の皆様もいかがなものかとは思います。
なお、イタリアのリゾットや、スペインのパエリヤなどは、スプーンではなくフォークを使用し、右手でいただきます。基本は、右手にナイフ、左手にフォークですが、切らなくても食べられるものは、ナイフを置き、右にフォーク一本だけを持って食べます。
パンやライス、付け合わせのサラダはメイン料理の左側(または左上)に置きます。左側や左上にあるお皿から、右手にもったフォークですくって食べる方のは、個人的には難易度高めです。
西洋料理のテーブルマナーはイギリス式orフランス式?
まず、基本事項の確認になりますが、日本では公式(公的)な晩餐会ではイギリスのテーブルマナーが採用されています。
明治6(1873)年、天長節(天皇誕生日)の晩餐や御前会食における公式料理はフランス料理と定められました。ただし、テーブルマナーは皇室外交でも関係の深かったイギリス式が採用されたことによります。
あらら、というか、いいとこ取りなのか、ご機嫌伺いなのか、スタートからテーブルマナーの境界線が曖昧なのは、日本らしいと言えば日本らしいですね。
ですから、日本国内で西洋料理を食べる時には、イギリス式でも良さそうですが、これといった定めやルールが存在するわけではありません。昨今は、フランス式が日本では主流とされているようです。
フランス式やイギリス式をゴチャ混ぜにしないのがスマートと言えるでしょう。正式なコース料理でなければ、どちらかの作法だけを覚えておくのが、省エネな解決法です。
イギリス式テーブルマナーの基本
・スープはお皿の手前から奥に向かってすくい、スプーンの横側(左側)に口をつけていただきます
・スープが少なくなったら、皿の手前を少し持ち上げて(相手側に傾けて)すくいます
・ナイフは右、フォークは左。基本的に、フォークの持ち替えはありませんし、フォークで刺しづらい食べ物の場合は、フォークの背に乗せて食べます。これは、上流階級のイギリス人は、フォークの腹に食べ物を乗せたり、フォークの突き刺す刃の部分を上に向けるのを嫌うからだとされています。
・食べ終わった後は、6時の方向にナイフとフォークを揃えて置きます
現代では、イギリス人でもフォークを右手に持ち替えて、フォークの腹に乗せて食べている方も珍しくはないようですが、上流階級の方とご一緒の場合には避ける方が無難でしょう。逆に、上流階級とは縁がない場合には、気にする必要がないのかもしれませんね。。
フランス式テーブルマナーの基本
・スープはお皿の奥から手前、もしくは横から中央にむかってすくい、スプーンの先端に口をつけていただきます
・スープが少なくなったら、皿の奥を少し持ち上げて(自分側に傾けて)すくいます
・ナイフは右、フォークは左。お肉などは食べる分をカットしたら、ナイフをお皿の上方に置き、フォークを右手に持ち替えて肉を刺して食べます。フォークで刺しづらい食べ物の場合は、フォークの腹に乗せて食べます。
・食べ終わったら、ナイフとフォークを揃えて3時の方向に置きます。
イギリス式・フランス式よりも大切なこと
テーブルマナーで、一番大切なことは、食事を楽しむことです。そのために、最低限の作法を守ることが最優先であり、相手への配慮の方がよほど大切です。
【最低限の食事作法】
・食器やカトラリーはガチャガチャ音を立てない
・口にものを入れたまま喋らない
・音を立てて食べない・・・ズルズル、くちゃくちゃ、いずれもです
・ナイフの刃を他の人の方に向けておかない
・テーブルに肘をついて食べない
・食器は持ち上げない
・器に口をつけない・・・持ち手のついているスープカップは別
・ナプキンは、食事中は膝の上、お手洗いの行く時は椅子の上、食べ終わったらテーブルの上
テーブルマナーも社会のマナーも時代と共に変わります。2020年代半ばとなった今、日本における西洋料理のテーブルマナーの歴史を辿り、あれが正解、これがマナー違反、そんなの都市伝説、ただの昭和、、など、自分が良しと信じるものと相容れない作法を声高に批判しても、なんの解決にもなりません。
しかも、もともと単独で存在しない、白米を平皿で提供する「ライス」の食べ方で「マナー違反」など声高に主張することは、スマートではありません。
イギリス式であれ、フランス式であれ、堂々とした態度で食事に臨む方が、よほど見ていて気持ちがいいものです。相手にあわせて作法を変えられれば一番いいのでしょうが、難しい場合にはどちらかの作法だけを覚えておき、ごちゃ混ぜにしないのがベターです。
相手に不快な思いをさせないように、きれいに食事を楽しむことに意識を向ける方がいいですね。
なお、イギリス式の食べ方はフランス人から見れば「下品」で、フランス式の食べ方はイギリス人から見れば「下品」。国によって、作法は異なるのです。遠いアジアの国が、割り込んで入って、同じ民族の食べ方を他国の作法で批判するのも、「下品」なのではないかと思うのが、正直なところです。