喪中はがきの年齢は満年齢と数え年のどちらを使うのでしょうか。
また、年齢の書き方に決まりはあるのでしょうか。
書く際に「享年」などの言葉を付けるべきでしょうか。
今回は、喪中ハガキを作るにあたって気になる年齢の考え方や書き方、計算方法についてお話しします。
喪中はがきの年齢は「満年齢」と「数え年」どっち?
喪中ハガキの年齢は、満年齢と数え年、どちらを使っても問題ありません。
ただ、印刷屋さんに注文する場合のパンフレットを見ると、大抵「数え年で」と書かれています。これは、今までの慣習が「数え年」だったため、その方が無難だから、という踏襲的な意味が強いのでしょう。
ここで少し、歴史的な背景について触れてみましょう。
昔の日本では数え年による年齢計算でしたが、明治時代に制定した法律で満年齢を採用することになりました。ですが、その後数十年間は、公的なもの以外は変わらず数え年が使われていました。満年齢が民間まで広く普及したのは、昭和24年(1950年)になって制定された「年齢のとなえ方に関する法律」がきっかけです。
満年齢と数え年の違いはこのようなものです。
- 満年齢は生まれた日を0歳として、毎年の誕生日に年を取る。
- 数え年は生まれた日を1歳として、正月(1月1日)が来ると年を取る。
でも、今でも仏事に関しては数え年で行っているところが多いようです。昔からの慣習をそのまま受け継いでいるのです。(だって、墓誌や過去帳など、ご先祖様は数え年なのに、法改正したからといって、その後亡くなった人を満年齢にしたら統一性がなくなり、その家の子孫でさえご先祖様のことが分からなくなってしまいますものね。)
こんなことから、喪中ハガキについても「会葬御礼や位牌が数え年だったし、それに合わせて数え年の方が良いだろう」と考える人が多いです。(仏事の慣習は宗派や地域性により異なるため、満年齢を取り入れているところもあるかもしれませんが。)
実際の展開としては、葬儀等の際には多くの人が年齢に関しては特に何も考えておらず(葬儀社やお寺でやってくれる通りに数え年にしておき)、位牌を作る際や喪中ハガキを作る時点で「数え年と満年齢どっち?」と悩む展開になります。
そして、年配の方々なら数え年でも実感が湧くかもしれませんが、今の若い方々には「数え年って何なの?」「なぜ年齢に1歳加えなきゃいけないの?」と思われるのですよね。そこで、満年齢を使う方が分かりやすいのではないか、と考える人もいます。
ここで理解しておきたいことは、
喪中ハガキは法律的な決まりがあるわけではないので、どちらの考え方でも問題ない
ということです。
だから、その家の考え方次第なのです。
【満年齢vs数え年 考え方の一例】
「満年齢の方が分かりやすい」という考え方もありますが、一方で、
「数え年の方が長生きした印象なのでこっちが良い」という考え方もあります。
高齢で大往生の場合・・・例えば「満87歳か数え年88歳か」の表記で悩むなら、どちらにしても受け取る側は「大往生だったんだろう」と感じるのでどっちでも良い気がしますが、若くして亡くなった場合は喪中はがきを出す側も、受け取る側も「まだ若いのに・・・」という感情が湧き上がるもの。ですから、「少しでも長く生きていて欲しかった」という思いもあって数え年を使う、という人も少なくありません。
ちなみに、その家々で決めるとなると、次のような事態が生じるかもしれません。
例えば、80歳のおばあちゃんが亡くなって、その子供達(成人なので別世帯)が喪中ハガキを出す場合、兄は数え年で書き、弟は満年齢で書き。その両方の喪中はがきを受け取った親戚の人が、2枚のはがきを見比べて「同じ故人なのに年齢が違うけど、どっちが間違えたんじゃないしら?」と考えてしまう可能性があるということです。
でも、この場合、どちらも間違いではないのですよね。1歳違いなら満年齢と数え年の違いなんだなあ、と受け取る側が推測しなければならないのが面倒かもしれませんが。
そこで、
「書き方を工夫したらいいんじゃない?実年齢か数え年か、わかるように書けないの?」
と考える人もいます。
実は、それが「享年」という言葉を使った書き方なのです。次に、この「享年」についてお話しします。
喪中はがきの年齢の書き方で「享年(きょうねん)」はつけるべき?
数え年での表記と分かるように「享年○○歳」と書くケースがあります。ですが、これは付けなくても構いません。
むしろ、印刷屋さんのひな形を見ると付いていない文章が多いので、つけないのが主流になっています。
というのも、享年という言葉は複数の考え方があるため、「享年」をつけたから数え年ですよ、とは言い切れないのです。
では、ここで「享年」の意味や「数え年」「行年」等との関係について整理していきましょう。
享年とは?
享年と数え年はだいたい同じような意味で使う人が多いのですが、厳密には微妙に違います。
享年の「享」は「享(う)ける」という意味で、本来の「享年」の意味は「母体の体内に命を享けた時点を年齢の始まりとして、この世で何年生きたか」です。
言い換えると、享年は「満年齢に十月十日足したもの」なのですよね。(これに対して、「行年(ぎょうねん)」という言葉があります。こちらは「この世で何歳まで生きたか」を意味する言葉として「行年○○歳」として使われることが多いです。)
一方、数え年の定義は「生まれた時点で1歳、その後は毎年1月1日に1歳ずつ年齢が増えていく」なので、若干期間がずれることになるのです。
ですが、享年については法改正も関係して、意味が時代と共に変化してきていて、今では次のような考え方が存在します。
・「享年」=数え年。
・「享年」=満年齢。
・「享年」=満年齢に十月十日加えたもの。
また、「享年」と「行年」の関係性についても現在では、次の2通りの考え方があります。
・「享年」=数え年、「行年」=満年齢として意識的に分ける考え方。
・「享年」と「行年」は同じ意味なのでどちらを使っても良い、とする考え方。
更に、書き方については次のように変化してきています。
昔は、享年の場合は「享年○○」(←「歳」をつけない)、行年の場合には「行年○○歳」と書くものでしたが、
今は、どちらの場合も「歳」をつけて「享年○○歳」「行年○○歳」と書くこともあります。
これは、どれが正しい、誤りということではなく、時代の流れと共に日本語が変化していて、どれも正しい日本語として受け入れられているということなのです。
こうしてみると、数え年と分かるようにしたければ「享年」をつけてもいいという考え方はあるけど、それとは別に、「満年齢」でも享年を使うという解釈もあるので、これで絶対に相手に伝わるかどうかというと、確実性はありません。
そこで、「きちんと相手に伝えたい」ため、2通りの年齢表記で
「享年○○歳(満○○歳)」
と書く人もいるそうです。確かにこれなら間違いないし分かりやすいのですが、個人的には、そこまで細かく書かなくても良いのではないか・・・という気もしますよね。
そもそも、喪中はがきは故人の情報を相手に知らせるよりも、相手に年賀状を欠礼するお詫びが主目的なのです。
となると、年齢についてこだわりが無ければ、特に何もつけずに満年齢か数え年、どちらかを決めてサラッと書くのがシンプルで良いのではないでしょうか。
喪中はがきの年齢計算で注意すべきことは?
喪中はがきを書くにあたって一番間違えそうだな、と心配になるのが年齢ですよね。
特に、数え年で書き表す場合には、単純に「実年齢+1歳」とするのではなく誕生日前と後で次のようになるので注意しなければなりません。
・誕生日前→「実年齢+2歳」
・誕生日以降→「実年齢+1歳」
ただ、故人が高齢だと年齢をすっかり忘れているケースも多いでしょうし、その場合には以下の年齢早見表で確認してしまうのが一番早くて確実です。
この表では誕生日を迎えた場合の年齢になるので、
★数え年の場合→「この表の年齢+1歳」(誕生日を迎えたかどうかを問わず)。
★満年齢の場合
・誕生日前→「この表の年齢-1歳」
・誕生日以降→「この表の年齢」
となります。
さいごに
喪中ハガキにおける年齢の考え方は、数え年と満年齢のどちらを使っても問題ありません。
葬儀の際の会葬御礼や位牌と合わせる考え方でも良いし、
満年齢の方が分かりやすい世の中なので満年齢にする、という考え方でも良いし、
これは最終的にその家でどう考えるか、ということで大丈夫ですよ。