親戚の葬儀が浄土真宗で行われることを知って、
「香典の表書きは何にするのかしら?」
「葬儀のマナーが分からないけど大丈夫かしら?」
と心配になる人もいるでしょう。
実際、浄土真宗は他の宗派と違う点が多いので注意が必要です。
今回は、浄土真宗の葬儀参列時に知っておきたい、
・香典袋の表書きは何を選ぶべきか
・浄土真宗のNGワードはどのような言葉があるのか
・焼香時におけるマナー
以上についてまとめました。
浄土真宗の葬儀で香典の表書きは?
仏教の葬儀では、香典の表書きは「御霊前」にするのが一般的ですが、浄土真宗の場合は「御仏前」または旧字体である「御佛前」を使います。
ただ、浄土真宗だから絶対に御仏前、とも言い切れないので注意が必要です。
というのも、浄土真宗では、御仏前や御佛前以外に「御香典」が使えます。「御香典」という言葉は仏教の葬儀であれば全て使えるので便利なのですが、こちらを敢えて慣習として昔から使っている地域もあるのですよね。どの宗派でも言えることですが、宗派本来の思想があるとはいえ、そこに地域的な慣習が加わって微妙に「おや?本来の使い方と違うような気がする」と思うような地域もあるのです。
具体的に言うと、浄土真宗だけど「ウチの地域では、御仏前でなく御香典を使います」とハッキリ言われたこともあります。(以前その人に「何故ですか」と訊いたところ、「仏教の葬儀では『御香典』を使えば間違いないから」と言われました。
また、これは本来であれば間違いなのですが、浄土真宗の門徒であっても教えを理解しておらず「御霊前」を使っている家もあるようです。実際、浄土真宗では「御仏前」を使う、ということを知らない人も案外多いらしく、葬儀の受付で「御霊前」と「御仏前」が色々混ざっていた、という話も聞いたことがあります。
いずれにせよ、香典というのは哀悼の意を伝えるもの、つまり「気持ち」の問題ですから、表書きを間違っていたとしても喪主としては、渡された気持ちが嬉しいものであり、表書きが間違っていたとしても非常識だという思いは抱かないものです。ですから、あまり神経質になり過ぎずに考えましょう。地域的な慣習が分かればそれに従い、分からなければ浄土真宗の常識である「御仏前」を選べば問題ないでしょう。
浄土真宗でNGワードは何があるの?
浄土真宗に限らず、葬儀の場ではいくつかNGワードがあります。
例えば、
「重ね重ね」「度々」のような重ね言葉や、
「再び」「続いて」のような不幸が続くことを思わせる言葉、
「消える」、数字の四(死ぬ)や九(苦しむ)のような不吉な言葉
などがあります。
でも、浄土真宗の場合はこれに加えて宗派の思想としてのNGワードがあります。
浄土真宗の思想の大きな特徴に「人は亡くなると直ぐに成仏する」ということがあるのですが、ここから様々な言葉がNGワードになっているのです。
具体的には、一般的な葬儀でよく使う言葉として
「ご冥福をお祈りします」「安らかにお眠りください」
等の言葉があるのですが、これらは使えません。
この場合、「謹んで哀悼の意を表します」「〇〇様を偲びお念仏申し上げます」「浄土よりお導きください」
等の言葉を選びましょう。
※「冥福」というのは、冥土における幸福を祈る、という意味になってしまいます。浄土真宗では、死後に冥土で迷うことなく極楽浄土に行って成仏できるので考え方が全く違うのですよね。
また、
「供養」という概念もないため、この言葉を使いません。
浄土真宗でも四十九日法要などの法要はありますが、「魂が成仏するように」という意味での供養ではなく、故人や先祖を通じて自分達が仏法に接して功徳を積むという目的です。故人は死と共に成仏しているので、供養する必要がないのですよね。
同様に、「旅立ち」「さまよう」というような言葉も使いません。
その他、
「他界」は浄土に往って生まれることから「往生」と言いますし、
「草葉の陰」「天国」のような言葉は「浄土」と言います。
また、浄土真宗では故人につける名前を「戒名」ではなく「法名」と言います。
戒名というのは「戒律を受けた」という意味の名前で、「非常に厳しい修業の末に成仏する」という意味を表すのですよね。一方、浄土真宗では厳しい修業をしないで即成仏となります。ですから「戒名」とは言いません。仏弟子として名乗れることから「法名」となっています。
こうしてみると数が多くて覚えられない、と戸惑う人も多いでしょう。
でも、NGワードについては丸暗記するよりも「なぜ駄目なのか」を理解することが重要なのです。丸暗記だと形式的になりがちで、哀悼の意が伝わりにくいのです。やはり、理屈を理解しながら考えていくと気持ちが伝わりやすいし、出来れば自分自身の言葉で哀悼の意を表すようにしたいものです。
「なぜ駄目なのか」については、浄土真宗における葬儀というのは、「別れを偲ぶ場」とはいえ、阿弥陀如来の力で極楽浄土に生まれ変わり、仏になったことを受け止める場でもあるということです。
これがきちんと理解できると、今回お話ししたような正しい言い方が自然に出来るようになると思いますよ。
浄土真宗の葬儀で焼香その他マナーの注意点は?
浄土真宗の葬儀で特に注意したいのが、焼香マナーです。
お焼香では、額に持ち上げていただくのはNGであり、お香をつまんでそのまま香炉に入れます。焼香の回数は、浄土真宗の中でも派によって異なります。
(実際に葬儀の場面で何回行うか迷う場合は、前の人のやり方を見て回数などを同じように合わせるのが無難です。 )
実際の焼香の流れは以下の通りです。
(1)焼香台の前に立ち、ご本尊に軽く一礼します。
(2)お香をつまんでそのまま香炉に入れます。(焼香の回数は派によって異なります。)
(3)念珠を両手にかけて合掌し、念仏の「南無阿弥陀仏」を唱えながら拝みます。
(4)ご本尊に一礼をして退出するか元の席に戻ります。(退出か元の席に戻るか、については会場の指示に従います。)
さいごに
浄土真宗は他の宗派に比べるとNGワード等の制約が多いのですが、これは、宗派の思想が他と大きく異なるからです。表書きが「御霊前」でなく「御仏前」なのも、浄土真宗では、亡くなると霊になるのでなく即成仏するとされているからです。葬儀が浄土真宗と事前に分かっていれば、このようなことに注意して臨みましょう。
ちなみに、浄土真宗の場合、葬儀の後に帰宅してから「清めの塩」を撒く必要がないので、会葬御礼の中に入っていないケースが多いです。迷信などに振り回されないのも浄土真宗の特徴なのです。
今回の記事が参考になれば幸いです。