日本で親しまれている風習であり、先祖供養行事でもあるお盆では、ご先祖様の霊を家へ迎えるため初日には迎え火を、送り出すために最終日には送り火を焚きます。
近年は、社会生活の変化や住宅事情により、お盆の迎え火や迎え火を焚けないことも増えていますね。
今回は、迎え火と送り火のやり方や時間帯、マンションなどで火気厳禁の場合にどうすればいいのかをご紹介します。
お盆の迎え火と送り火のやり方や時間帯は?
お盆にはご先祖様の霊を家に迎えて供養するのですが、お迎えする時には迎え火を、送り出す時には送り火をします。
迎え火を焚くことでご先祖様の霊が帰ってくる時には道標となり、送り火を焚くことでご先祖様の霊が帰るのをしっかり見送る証になるからです。
昔は、盆の入りにお墓参りをした後、寺院の僧侶に読経していただき、持参した盆提灯に火を灯してもらいました。その火を消さないように家に持ち帰り、仏壇のロウソクに灯したものが迎え火でした。ご先祖様の霊は盆提灯の明かりが目印になって家へ帰るとされています。
社会生活の変化もあり、現代では家で迎え火を行うのが一般的です。
お盆の準備

迎え火を行う前の12日か13日午前中。次のようなお盆の準備をして、墓参りを済ませます。
お盆の準備
- 仏壇の前に精霊棚※(しょうりょうだな)を設けます
- 精霊棚に位牌(先祖代々の位牌を含む)を移し、季節の花や野菜、果物、白玉団子等をお供えします
- 胡瓜や茄子を使って馬や牛などの乗り物をお供えすることもあります
- 盆提灯を飾ります(精霊棚や盆棚の前、仏壇の両脇、軒先など)
※ 精霊棚:小さな机に白い布をかけるか、ゴザを敷いたもの。仏壇があれば精霊棚は不要とする考えもあります
※ 地方や家の慣習によって、行事の内容やお墓参りのタイミングも異なります
迎え火のやり方や時間帯は?

迎え火を焚くのは通常13日の夕方です。
- 最初に盆提灯の火を灯します
- 家の門口や玄関先で、焙烙(ほうろく・素焼きのお皿)の上でオガラを焚いて合掌しご先祖様の霊を迎えます
- ご先祖様の霊は燃やしたオガラの煙に乗り家へ戻ってきます
オガラ:麻の皮をはいだ後に残る芯の部分で、お盆の時期になると町のスーパーで販売しています。麻は昔から清浄な植物として考えられていました。悪いものを祓って清めるという意味があるため、迎え火でも麻からできたオガラを使用します。
送り火のやり方や時間帯は?
送り火は、お盆明けの16日に迎え火を行った場所で、同じように火を焚いてご先祖様の霊を見送ります。
オガラと共に、胡瓜ナスで作った馬や牛などの乗り物があれば、それを一緒に燃やします。この火の煙に乗り、ご先祖様がお墓へ帰るとされています。
16日午前中までご先祖様が家に居るとされているため、午後に焚くのですが、実際には夕方以降に焚くことが多いです。夕方以降といっても、特に時間帯の決まり事などはありません。
そもそも、自分達にとって大事な先祖の霊をお迎えするのですから、お迎えは早い方が喜ぶでしょうし、お見送りするのは名残惜しいし、少し遅めでも構わないし、むしろその方が気持ちがスッキリする、と私は亡くなった祖母に教わりました。実家では送り火は夜8時くらいで真っ暗な中行っていたものです。
お盆の迎え火や送り火 マンションの場合はどうする?

マンションやアパートなどの集合住宅の場合は玄関やベランダで迎え火や送り火を焚くのは難しいですよね。そもそも規約で、玄関やベランダで火を焚くことが禁止されているところも多いことかと思います。
このような場合は、火を焚くのでなく盆提灯を飾ります。
盆提灯は、ご先祖様や個人の霊が迷わずに帰ってこられるようにするための道標として灯す提灯です。故人の冥福を祈り、感謝を表す意味もあります。最近の盆提灯は、ろうそくに火を灯すのではなく、電気式や電池式などが主流です。火事の心配もありませんし、マンションやアパートなどの規約違反にもなりません。
盆提灯は、盆棚や精霊棚(しょうりょうだな)、仏壇の両脇に飾るのが一般的ですが、迎え火や送り火の代わりに灯す際には玄関や軒先などに移動させるのもいいでしょう。
【迎え火の代わりに】
- 盆提灯を灯して玄関先や軒先に立ちます。
- 合掌しご先祖様の霊を迎えます。
- 盆提灯の明かりを消します。盆提灯はお盆期間中は、仏壇の両脇や盆棚などの近くで灯します。
【送り火の代わりに】
- 盆提灯を灯して玄関先や軒先に立ちます。
- 合掌しご先祖様の霊をお見送りします。
- 盆提灯の明かりを消します。
◉ 盆提灯も以前はスタンド式のものが多かったのですが、最近はスタンドなしのコンパクトなものや、コードレスなどもたくさんあります。マンションやアパートなどの室内でも飾りやすくなりましたね。
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さいごに
マンションやアパートなどの集合住宅が多い現在、お盆の迎え火や送り火を行わない(火を焚けない)場合には、盆提灯を灯すことでご先祖様や故人の道標となります。
ご先祖様に感謝し、故人を偲び、穏やかなお盆期間をお過ごしください。
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