一般葬であれば、喪服の着用が一般的ですが、家族葬の場合にはどうなのでしょうか。
家族や近親者の身内だけの場合でも、喪服の着用がルールなのでしょうか?
近年増加傾向にある家族葬ですが、参列経験がないため、いざ家族葬を営む際には服装をどうしたものが悩む方も多いかと思います。比較的自由度の高い家族葬ですが、服装に関しても特別なルールはありません。一般的な葬儀に参列する際と、基本的な考え方は同様です。
今回は、身内だけで営む家族葬での服装な持ち物、身だしなみについての考え方をご紹介します。あくまで考え方です。故人や参列者、関係者に誤解や失礼のないよう、家族で話し合い決めるといいでしょう。
身内だけの家族葬でのドレスコードは?
身内だけの家族葬といっても、葬式(通夜・葬儀・告別式)の内容は、一般な葬儀と変わりません。参列者の服装に特別なルール・ドレスコードはありませんが、一般葬と同様、つまり喪服と考えるのが一般的です。
ドレスコード(服装規定)とは、TPOつまり、時間帯や場所、シーンなどに応じた服装の基準・ルールのことです。その場の雰囲気を壊さない、周囲の人の気分を害さないためにも重要です。
ただし、高齢者が多い、遠方からの参列者が多い、季節的な理由などから、喪主が平服での参列を案内しておけば、喪服を着用しなくてもマナー違反とはなりません。くれぐれも参列者の判断ではありませんので、ご注意ください。
身内だけの家族葬でも、喪服と数珠は必要 ?

喪主から案内があれば別ですが、基本的に身内だけの家族葬でも、喪服・礼服を着用し、仏式であれば数珠を持参する方がいいでしょう。
仏式の葬儀では、数珠は必須のような言い方もされていますが、必須ではありません。なければないで構わないのですが、自分用のものを用意しておく方がいいでしょう。
数珠は、仏教の礼拝具の一つで、数珠が必要なのはお経をおなえる僧侶です。念仏を唱える際、数珠を持ち、その珠を数えることで、煩悩を払い、心を静めます。また、故人を偲ぶ気持ちを表すものとしても用いられるため、仏式の葬儀や法要では多くの参列者が数珠を持参します。
仏式以外では使用しませんし、仏教徒でなければ数珠を持つ必要もないのですが、魔除けや厄除けの意味もあるので、宗派・宗教を問わない略式数珠を用意される方もいます。
身内だけの家族葬なら平服・私服・カジュアルはあり?
身内だけの家族葬のため、喪主から平服での参列と案内が来た場合には、平服で参列しても問題ありません。
ただし、平服とは略喪服、普段着よりも少しフォーマルな服装のことです。私服でも、普段着でも、カジュアルな装いのことでもありません。
男性:黒・紺・ダークグレーなどのダークスーツ、ネクタイ・靴下着用、裸足はNG
女性:黒・紺・グレーなどのスーツやワンピース、アンサンブルなど。ストッキング着用、素足はNG。アクセサリー、マニキュア、お化粧、髪型、髪飾りなどについては、華美なものは控えましょう。
礼服(喪服)や略礼装に比べるとカジュアルではありますが、葬儀や法事にはふさわしい服装です。故人を偲ぶ気持ちを込めて、清潔感のある服装を心がけましょう。
平服とは、礼服・礼装でなくてもよいという意味です。
服装は気にしないで普段着できてね、、私服でいいよ、カジュアルでいいよ、という意味ではありません。
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家族葬で喪服以外なら、スーツやシャツ、ネクタイ、パンツ、靴はどうする?
家族葬のため、喪主から平服での参列との案内が来た場合や、なんらかの事情で喪服の用意が間に合わない場合でも、葬式(葬儀・告別式)に見合った服装を整えましょう。
家族葬で喪服以外を着用する場合の服装のポイントは以下の通りです。
・スーツ:黒またはダークグレーの無地
・シャツ:白または淡い色の無地
・ネクタイ:黒の無地
・パンツ:黒またはダークグレーの無地
・靴:黒またはダークグレー
家族葬でビジネススーツ、グレースーツ、ストライプスーツ、リクルートスーツはあり?

葬式(通夜・葬儀・告別式)は、一部を除けば急なものです。若い人であれば、親族の葬儀参列経験などもないため、喪服の用意が間に合わないこともあるでしょう。その際には、グレースーツやストライプスーツ、ビジネススーツ、リクルートスーツを着用しても問題ありませんが、できる限り次のようなポイントは押さえておきましょう。
・できるだけ黒色のスーツを選ぶ
・派手なデザインのスーツや、明るい色のスーツは避ける
・ネクタイは黒無地にする
・アクセサリーは控えめにする
・靴は光沢のない黒色の革靴を履く
ビジネススーツ
ビジネススーツは、ビジネスシーンにおいて着用するスーツのことなので、デザインや色も様々です。喪服の用意が間に合わない場合には、ビジネススーツでも構いませんが、黒やダークカラーで、できるだけ無地のものを選びましょう。
日本人は、ビジネスシーンでも黒のスーツを着用することもありますが、黒といってもビジネススーツと喪服とは異なります。ノークッションやくるぶしが見えるような丈の短いスーツは、黒でもカジュアルなイメージであることは、理解しておきましょう。流行りのファッションであっても、フォーマルな場には相応しくないものもあるのです。
グレースーツ
グレースーツは、ビジネスシーンでよく着用されるスーツです。葬儀には、黒色のスーツが最も適していますが、グレースーツでも問題ありません。できるだけ黒色に近いグレーを選ぶといいでしょう。
ストライプスーツ
ストライプスーツも、ビジネスシーンでよく着用されるスーツです。喪服の用意が間に合わない場合には、ストライプスーツでも問題ありません。できるだけダークカラーの生地で、ストライプが細く目立たないものを選びましょう。
リクルートスーツ
就職活動用のリクルートスーツでは、黒や濃紺などのダークカラーで無地、デザインもシンプルなものを用意していることが多いでしょう。控えめな印象となりますので、喪服の代わりに着用しても構いません。
喪服以外のスーツでもネクタイ・靴下・靴は黒
喪服の用意ができない場合には、ビジネススーツやリクルートスーツを着用することもできますが、ネクタイ・靴下・靴は黒のものを着用しましょう。
黒無地のネクタイは、1本揃えておくと間違いありません。ビジネススーツや礼服を扱っている紳士服店では、ほぼ間違いなく購入できます。あまりペラペラなものや、中途半端に光沢のあるものは避けた方が無難です。
靴下も、礼装用では長めのものを着用します。座った時に、パンツの裾から素足が見えないのが基本です。ビジネスシーンとは異なりますので、弔辞用の黒のネクタイとともに、1~2足用意しておくと安心です。
葬儀は、故人を偲ぶ大切な儀式です。故人を尊重し、故人を偲ぶ気持ちを込めて、服装を整えましょう。
家族葬で女性の喪服にパンツスーツはあり?

日常的にも、ビジネスシーンでも、パンツスタイルが珍しくもないご時世であるのに、喪服になると急に「マナー違反」と言われます。洋装での女性の喪服とはどういうものか、家族葬ではどうなのかも、少し掘り下げてみます。
女性の喪服のスタンダードは?
女性の喪服で洋装の場合は、ブラックフォーマルと呼ばれるワンピースやアンサンブルが基本です。
- 光沢や透け感のない濃く深い黒で、無地や綾織のもの
- 襟ぐりの開きが狭く、ひじ・ひざが完全に隠れるなど、肌の露出を控えたデザイン
・スカート丈…ひざが出ないように、ひざ下くらいまでの長さ
・袖丈…ワンピースの場合には肘が隠れる程度の5分丈、7分丈
・ジャケットは、テーラードやノーカラージャケット
女性の喪服でパンツスーツはダメなの?
女性のパンツスーツが葬儀においてはマナー違反とされるのは、パンツスーツは喪服としての正装ではないからです。上述の通り、洋装での喪服は、ワンピースやアンサンブルが基本です。
近年では、女性のパンツスーツを喪服として着用する人も増えてきています。これは、女性の社会進出や、女性の喪服の選択肢が広がっていること、動きやすさなどが理由でしょう。冠婚葬祭のマナーに手厳しい年配の方でも、動きやすさからパンツスタイルの喪服を着用される方も増えています。
・遺族の近親者の場合には、喪服でのパンツスーツは避けるのが無難
・一般参列者の場合には、略喪服としてパンツスーツを着用するのは問題なし
ただし、参列者とはいっても、葬儀(故人の格)によってはパンツスーツは避けた方が無難
家族葬で女性がパンツスーツを着るのはあり?
身内だけの家族葬であれば、女性でも喪服にパンツスーツを着用することは問題ないと言えるでしょう。ただし、あくまでも「問題ない」というだけで、必ずしも「好ましい」わけではないことは、理解しておいた方がいいでしょう。
喪主が平服での参列を案内した場合には、パンツスーツであっても問題はありません。ただし、パンツスーツであっても、アクセサリーやメイクなどは、喪服に準ずるようにします。
家族葬の場合には、参列者が限定されるだけに、その中に保守的な方がいる可能性もあります。身内だと言っても、周囲の状況に配慮することも大切です。
家族葬なら、ストッキングやメイク、ネイル、ピアス、パールのアクセサリー、バッグはどうする?
家族葬でも、身だしなみは一般葬と考え方は同様です。
ストッキング
成人した女性であれば、いくら家族葬とはいっても素足や裸足は避け、黒のストッキングを着用します。
中学生や高校生で、学校の制服がある場合には、指定の靴下を着用します。校則で白の靴下と規定されている場合には、靴下は白で構いません。
メイク
家族葬であっても、ナチュラルメイクが望ましいです。全体的に控えめなメイクとし、ラメの入ったようなキラキラしたアイシャドウや、華やかな色の口紅は避けます。香水や強い香りの化粧品も避けます。
ネイル、外せないネイルの対処法
家族葬であっても、ネイルは避けた方がいいでしょう。なんらかの事情でネイルをする必要がある場合には、クリアやごく薄いベージュやピンクとし、肌に馴染むものを選びます。
ジェルネイルのように、突発的なことに対応できないネイルの場合には、フォーマル用の黒の手袋をしてネイルを隠すといいでしょう。
ただし、葬儀中は手袋で隠すことができますが、トイレや食事の時には手袋を外すことになりますので、パーフェクトな解決策ではないことはご承知おきください。
ピアスやイヤリング、ネックレス、指輪は?
本来、葬儀ではピアスやイヤリングを含むアクセサリーはつけないものとされています。家族葬であっても同様で、避ける方が無難でしょう。ただし、パール(真珠)のアクセサリーだけは認められています。結婚指輪や婚約指輪は例外です。
・イヤリング・ピアス:シルバーやプラチナの土台に1粒の真珠(パール)
・ネックレス:1連のパールのネックレス
・指輪:結婚指輪、婚約指輪で華美でないもの
パールのアクセサリー
パールのアクセサリーは、弔事でも認められているものですが、必ずしもつけなければならないものではありません。また、認められているとはいっても、ぶら下がって揺れるデザインや、華美なものは避けましょう。
【イヤリングやピアス】
正面から見て金具が見える、複数の真珠が施されている、ぶら下がって揺れるものは避けます
【ネックレス】
基本は1連、首に沿ったチョカータイプが望ましいです
二連のネックレスは「不幸が重なる」といわれ、日本国内ではタブーです
バッグ
家族葬であっても、喪服や参列時の服装に見合った黒のバッグを持ちましょう。
基本的には、ブラックフォーマル用のバッグが望ましいのですが、急で用意が間に合わない場合には、金などの金具のない黒のハンドバッグなどでも代用できます。荷物が多い場合には、黒のサブバッグのようなものでもいいでしょう。
夏の家族葬なら服装どうする?
夏でも葬儀や告別式では、体調不良などの特別な事情がなければ上着を着用するのが基本です。
ただ、一般の参列客のいない身内だけの家族葬の場合には、喪主からの案内があれば平服での参列も問題ありません。その場合には、男性であれば裏地なしの夏用のダークスーツでも構いません。女性の場合には、ジャケットなしでワンピースなどで構いませんが、肌の露出を控え、5分袖や7分袖のものを着用しましょう。
昨今の夏は、暴力的に暑いため、葬儀や告別式での服装は悩ましいものがありますが、故人を偲ぶ大切な儀式ですから敬意を払った服装で参列することが大切です。
身内だけの家族葬で、故人との思い出の服や故人が好きだった服装はあり?
身内だけの家族葬であれば、故人との思い出の服や故人が好きだった服装で参列することは、マナー違反になるのでしょうか。
葬儀は、故人を偲ぶ儀式であり、故人を敬う気持ちが大切です。そのため、喪服を着用するのが一般的ですが、故人との思い出の服や故人が好きだった服装を着ることで、故人への愛情や感謝を表現することもできるでしょう。
そうは言っても、華美なものやお別れの儀式に相応しくないような服装であれば、避ける方が無難です。
自宅での家族葬であれば、問題はないかもしれませんが、式場を借りて執り行う場合や火葬場では、他のご遺族とすれ違う機会もあることでしょう。自分の思いだけではなく、いくら赤の他人でも他の遺族の心情にも配慮することが望ましいでしょう。
まとめ
家族葬といっても、服装は一般葬と同様に考えます。急で喪服の用意が間に合わない場合には、ビジネススーツやリクルートスーツでも構いません。
ただ、今回は喪服以外のもので代用したとしても、今後も身内や社会人としてのお付き合いの中で葬儀や告別式に参列する機会はあることでしょう。落ち着いた時期に、喪服は用意しておくことをオススメします。不幸もないのに、喪服を用意するのは縁起が悪いように思うかもしれませんが、葬儀や告別式とは急にあるものです。その時に慌てないように、平時に用意しておく方が安心なものです。
私の家族も、高齢の親族が入退院を繰り返した際に喪服を揃え直しました。丈夫な方でしたので、購入した喪服の出番はそれから数年後になりました。衣替えの時期に、クローゼットを整理するたびに、「出番もないまま随分経った、元気でなによりなにより」と、家族で笑っていたものです。最後は本当に急で大慌てでしたが、家族分一式揃っていたので喪服のことで慌てることもなく、駆けつけることができました。
喪服は不幸の際に着用するため、購入するにも楽しいものではありません。ただ、最後の別れの時に、故人を偲び、故人に敬意を表するものでもあります。滅多に着ないものとはいえ、自分に見合ったものをきちんと用意しておくといいでしょう。